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統合失調症では幻覚の中でも圧倒的に幻聴が多く見られます

幻覚を見る女性

 

「五感」が乱れ、存在しないものを知覚します

幻覚とは、現実にないものがあるように感じることです。奇妙なものが見えたり(幻視)、実在しない音や声を聞いたり(幻聴)、イヤな臭いや味がしたり(幻嗅、幻味)、ふつうなら感じない異常な感覚を体に感じたり(幻触、体感幻覚)するなど、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れるの人間の「五感」に対応するさまざまな幻覚が見られます。

 

 

幻覚は、妄想などと同様に、急性期(発病後1カ月〜数カ月)に活発にあらわれる陽性症状の1つです。

 

 

非難や悪口などが聞こえてくる「幻聴」

幻覚の中でも多く見られるのが、実際には聞こえるはずのない声が聞こえてくる幻聴(あるいは幻声)です。聞こえてくるのは、自分の声の場合もありますが、多くは「他人の声」です。

 

統合失調症であらわれる幻聴には、次のようなものがあります。

 

  • 自分に対する悪口(陰口・からかい)やうわさが聞こえてくる。一人の声だけでなく、複数の人が悪口をいい合っている場合もある。
  • 「あれをしろ」「これをしろ」と行動を指示する(命令する)声が聞こえてくる。
  • 存在しない声が自分に話しかけてきて、それに受け答えする。あるいは、他人と他人が自分のことを話しているのが聞こえる(対話性幻聴)。
  • 自分の行動や思考にいちいち注釈(コメント)を加えてくる(注釈幻声)。
  • 自分の考えていることが外から声となって聞こえてくる(思考化声〈考想化声〉)。
  • 水道や空調音、車の騒音とともに声が聞こえてくる。音が消えると声も止まることがある(機能性幻聴)。

 

幻聴は、さまざまな聞こえ方をします。ふつうの会話と同じように聞こえたり、症状が重い場合は、神の啓示にも似た強い強制力、呪縛力をもって聞こえる場合もあります。人によっては、声ではなく「テレパシー」や「電波」のように感じるといいます。「頭に直接聞こえる」「おなかの受信機で聞く」「考えが直接頭の中に入ってくる」と表現する人もいます。

 

 

幻聴があると、ブツブツと独り言をいう「独語」や、おかしくもないところで笑う「空笑」が起こりやすくなります。幻聴に向かって反論したり、どなったりすることもあります。

 

幻聴が活発に聞こえるようになる幻覚のある患者さんによく見られる行動と、その内容を完令に無視することができなくなり、患粁さんの行動にさまざまな影響をあたえます。もっとも問題となるのが、具体的に行動を命令(指示)する声が聞こえる場合です。

 

「眠るな」とか「食べるな」といった命令もありますが、「ビルから飛び降りろ」「自殺しろ」、あるいは「相手の顔をなぐれ」といった命令が聞こえてくる場合があり、声に圧倒されて命令に従ってしまうこともあるので、注意が必要です。

 

ただし、統合失調症の軽症化か進んでいる現在では、幻聴や妄想による自傷・他害といった激しい症状を示すケースはそれほど多くはありません。

 

また、治療によって症状が軽くなるにつれて、幻聴の頻度も減り、内容もしだいに意味がないようなものになって、最終的には消滅します。

 

なお、幻聴の多くは自分を非難したり、悪口をいったり、命令をしたりする内容です。こういった体験は不快感や恐怖感、不安感をともなうために、ほとんどの患者さんが、幻聴についてはあまり語りたがらないという傾向があります。

 

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そのほかの幻覚

幻視

実際にはないはずのものが見えます。見えるものは、人や動物、事物、風景などが多く、眼前にありありと見えることもあれば、目の中や頭の中、ときには自分の背後に見えることもあります(視野外幻
視)。また、もう一人の自分を自分が見るという「自己像幻視」もあります。

 

ただし、統合失調症で幻視が起こることはまれです。

 

 

幻味・幻嗅

実際には何でもないのに、「変な昧がする」「イヤな味がする」などと感じます。「毒を盛られた」などと、被害妄想と結びついてあらわれることもあります。幻嗅は、実際には存在しない臭いを感じることで、これも「毒ガスにやられた」などと被害妄想と関連してあらわれることがあります。

 

 

幻触

しびれる、くすぐったいといった単純なものから、だれかになでられている、さすられている、皮膚の上を虫がはっている、といった妄想的なものまであります。

 

 

体感幻覚

脳が腐って流れ出る、骨がボロボロになる、内臓が腐っている、子宮の中にキツネがいる、血管の中を虫が動きまわっている、などといった体性感覚の幻覚です。

 

 

幻覚のある患者さんによく見られる行動

 

  • ブツブツと独り言をいう。あるいは目の前にいない人と会話をする
  • 自分の行動にいちいち自分で「コメント(解釈)」を加える
  • おかしなことがないのにニヤニヤ笑う
  • 事実にそぐわない話をする
  • 話の内容が急に飛躍する。あるいは意味不明のことをいう
  • 不思議な体験を語る
  • 食べものの臭いや味がおかしいと文句をいう
  • 「汗臭い」などと、しきりに体臭を気にする

 

 

 

なぜ「幻聴」が多いのか

幻聴は「自我障害」が原因で起こります

統合失調症では、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感に「幻覚」があらわれます。幻視、幻触、幻味、幻嗅なども起こりますが、圧倒的に多いのが「幻聴」です。統合失調症で起こる幻覚の中で、なぜ幻聴が特に多いのかについては、さまざまな説がありますがまだはつきりしたことはわかっていません。

 

 

理由の一つとして考えられるのは、統合失調症に特徴的な症状である「自我障害」との関係です。自分と他人の境界を「自我境界」と呼びますが、健康な人はその自我の境界がはつきりしています。ところが、統合失調症の人は、その境界があやふやであったり、もろかったりします。

 

そのために、他人の考えが自分の中に入ってくる「思考吹入」や、逆に自分の考えていることが他人に筒抜けになっていると感じる「思考伝播」といったことが起こります。

 

つまり、統合失調症では、自分と他人の境界があいまいになるために、自分が主体的に行っていることと、受動的にさせられていることとの区別がつかなくなるのです。

 

統合失調症の症状の一つに「作為体験(させられ体験)」というものがあります。これは、自分の行動や考えなどが、自分の意思ではなく、自分ではない何者かによって支配されている(あやつられている)と感じることですが、これなども自我の境界のくずれをあらわす症状といえるでしょう。

 

「作為体験」は、本当は自分が行いたいと思っていることを、あたかも他人の指示や命令で行っているかのように感じて行うことです。

 

 

聞こえるはずのない他人の声が聞こえる「幻聴」も、この「作為体験」と同様のメカニズムで起こると考えられます。つまり、他人の声として聞こえてくる内容は、本当は自分が考えていることなのですが、それが他人の声として聞こえてくるわけです。

 

実際に、幻聴として聞こえてくる内容は、患者さんが知っていることや思っていることばかりです。幻聴で自分の悪口が聞こえてくるというのも、内心で「悪口をいわれたらイヤだな」と思っていることが、自我の境界がくずれているために、それが他人の声として聞こえてくるのだと考えることもできます。


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