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統合失調症での抗精神病薬には幻覚や妄想を抑える効果があります

統合失調症の向精神病薬

 

薬物治療の中心は向精神病薬です

統合失調症の治療薬の中心となるのは「抗精神病薬」です。ほかに、「抗うつ薬」「抗不安薬」「気分安定薬」「抗パーキンソン病薬」「睡眠導入剤」など、補助的に使われる薬があります。

 

抗精神病薬は、幻覚や妄想を抑えたり、興奮を抑える作用があり、メジャートランキライザー、強力精神安定剤とも呼ばれます。精神障害の治療薬を一般に「向精神薬」といいますが、抗精神病薬は、向精神薬の中でももっとも強力な精神安定作用を持つ薬です。

 

抗精神病薬は、1950年代以降につくられた第一世代の「定型抗精神病薬」と、主に1990年代以降に発売された第二世代の「非定型抗精神病薬」に大きく分けられますが現在日本では、あわせて約30種類の抗精神病薬が認可されています。

 

ただし、30種類の抗精神病薬をすべてそろえている医療機関はそれほど多くなく、ほとんどの医師は、自分の経験や、内外の論文から得られた情報をもとに、その患者さんにもっとも効くと思われる薬を選んで処方しています。

 

 

抗精神麟羅が効くメカニズム

抗精神病薬が統合失調症に有効であることは、医学的にも証明されています。臨床試験では、統合失調症の患者さんの約70%に症状(陽性症状)の改善が見られると報告されています。これは、肺炎に対するペニシリンの効果、または結核に対するストレプトマイシンの効果に匹敵するものです。

 

抗精神病薬にはさまざまな種類がありますが、それらに共通した作用は、ドーパミンの情報伝達を抑える作用です。

 

脳内では、情報をやりとりするために、多くの「神経伝達物質」が分泌されていますが、ドーパミンもその一つです。ドーパミンは、注意、意欲、感情、運動調節といった人間の大切な機能をつかさどる物質で、その過剰な分泌、あるいは機能低下が、統合失調症の陽性症状や陰性症状を引き起こすとされています。

 

 

抗精神病薬は、このドーパミンを受け取る部分(ドーパミン受容体)と結合して、ドーパミンの作用をブロック(遮断)することにより、統合失調症の症状を起こりにくくすると考えられています。

 

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第一世代の定型向精神病薬

第一世代の定型抗精神病薬には、次のような効果があります。

 

陽性症状の改善

抗精神病薬は、特に陽性症状に効果を見せます。幻覚や妄想、思考障害、作為体験といった症状を改善、あるいは軽減する働きがあります。

 

幻覚や妄想を抑える作用が強い薬としては、ハロペリドール(商品名:セレネース)やフルフェナジン(商品名:フルメジン)があります。

 

鎮静作用

精神運動障害に代表されるような、興奮、衝動性、攻撃性、不安、焦燥などに対して鎮静作用があります。統合失調症の患者さんに、抗精神病薬の効果についてたずねた調査では、「不安感や恐怖感がやわらいだ」という答えがもっとも多かったと報告されています。

 

興奮や混乱を抑える作用が強い薬としては、クロルプロマジン(商品名:コントミンなど)やレボメプロマシン(商品名:ヒルナミンなど)があります。

 

精神機能賦活作用

意欲や活動性を高め、感情鈍麻、無為・自閉などの陰性症状を改善する効果があります。ただ、意欲回復効果はすべての人に見られるわけではなく、全体の20%程度とされます。

 

意欲や活動性を高める作用が強い薬としては、スルピリド(商品名:ドグマチールなど)があります。

 

再発を防ぐ効果

抗精神病薬を飲みつづけることで病気の経過をよくし、再発を防ぐ効果があります。逆に、薬を勝手にやめると、再発率が非常に高くなります。

 

 

第二世代の非定型抗精神病薬

従来の定型抗精神病薬は、特に陽性症状に対して高い治療効果が認められますが、陰性症状や認知機能障害に対しては、効果があまり期待できないという欠点がありました。

 

また、定型抗精神病薬は、作用が強いだけに、副作用も強いという問題がありました。特に、急性の錐体外路症状(EPS)や、慢性のEPSである遅発性ジスキネジア、悪性症候群などを引き起こすおそれがあり、問題となっていました。

 

そこで、そういった問題を解決するために開発されたのが、陰性症状や認知機能の改善効果も望め、また副作用も比較的少ない「非定型抗精神病薬」です。1996年に「リスペリドン」が発売されてからは、非定型抗精神病薬が統合失調症の治療薬の第一選択薬となっています。

 

非定型抗精神病薬は、作用の違いから、「SDA」「MARTA」「DPA」の3つに大きく分類されます。

 

SDAとは、「セロトニン・ドーパミン・アンタゴニスト」の略で、神経伝達物質であるセロトニンとドーパミンの受容体の働きを遮断する作用がある「セロトニン・ドーパミン遮断薬」のことです。SDAには、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ぺロスピロン(商品名:ルーラン)、ブロナンセリン(商品名:ロナセン)があります。

 

 

MARTAとは、「マルチアクティング・レセプター・ターゲットーアンチサイコティックス」の略で、セロトニンやドーパミンだけでなくさまざまな神経伝達物質の受容体に作用して過剰な働きをブロックする「多元受容体作用抗精神病薬」のことです。MARTAには、オランザピン(商品名:ジプレキサ)、クエチアピン(商品名:セロクエル)、クロザピン(商品名:クロザリル)があります。

 

 

なお、クロザピンは、ほかの薬で効果が見られない「治療抵抗性」の患者さんに効果があるとされていますが、重篤な副作用として無顆粒球症や糖尿病性昏睡を引き起こす危険があり、使い方がむずかしい薬です(クロザピンは指定施設での入院治療が必要です)。

 

 

DPAとは、「ドーパミン・パーシャルアゴニスト」の略で、ドーパミンが過剰に働いているときは抑制し、少ないときは刺激して放出するように働く「ドーパミン受容体部分作動薬」のことです。DPAには、
アリピプラソール(商品名:エビリフアイ)があります。

 

これらの非定型抗精神病薬は、陽性症状に対しては従来の定型精神病薬と同程度の効果があり、なおかつ陰性症状や認知機能障害などに対しても一定の効果があることが認められています。

 

また、非定型抗精神病薬は、パーキンソン症状などの副作用があまり出ないものが多く、このため併用している抗パーキンソン病薬などを減らすことができ、さらにリハビリテーションなどほかの治療も進めやすくなるので、社会復帰という観点からも評価されています。

 

ただ、非定型抗精神病薬の高い効果は認められるものの、万能の治療薬というわけではなく、安全性について評価が定まるには時間を要するものもあります。

 

したがって、治療薬を定型から非定型に切りかえるべきかどうかは、慎重に判断する必要があります。新しい薬にかえることで、かえって症状が悪化する場合もあるからです。

 

 

それまで飲んでいた従来型の薬がよく効いて、副作用もあまりないようであれば、そのまま飲みつづけるという選択肢もあります。

 

一方、従来型の薬であまり効果が得られなかった人や、副作用が重い場合などには、新しい薬を試してみてもよいでしょう。また、再発して入院した場合などには、それまでの薬をやめて新薬に切りかえるよい機会となります。

 

いずれにしても、薬の切りかえについては、主治医とよく相談し、納得した上で決めることが大切です。

 

 

使う種類や量は人によって異なります

抗精神病薬には多くの種類がありそれぞれ効果の違いがあります。

 

すべての患者さんに同じ薬が効くとは限らないので、患者さん一人一人の症状に合わせて適切な薬を選ばなければなりません。そのためにはある程度の試行錯誤が必要です。

 

患者さんごとに薬の種類や量が異なることは、統合失調症のような精神疾患に限らず、すべての慢性疾患に共通した特徴といえます。

 

 

単剤療法が基本です

かつて、日本における統合失調症の薬物療法では、多くの種類の薬を大量に投与する「多剤併用(大量療法)」が主流でした。

 

多剤併用とは2種類以上の抗精神病薬を処方することですが、問題は、同じような効果の薬を2種類以上併用することです。また、不眠、焦燥、幻聴などの一つ一つの症状に対して薬が処方される場合も問題です。

 

多剤を併用すると、結果的に大量の薬を服用することになります。そのため、効果よりも副作用のほうが強く出てしまうおそれがあります。必要以上に行動が抑えられる過鎮静と呼ばれる状態を引き起こしたり、手足のふるえや耐えがたい運動症状などの副作用をもたらしたりすることがあるので、患者さんが服用をやめてしまう大きな原因となります。

 

 

また、はじめから複数の薬を出しては、どの薬が効いて、どの薬が副作用を生じさせているのか特定できないという問題もあります。

 

したがって、現在の統合失調症の薬物療法は、抗精神病薬をできるだけ単剤で、しかも少量からはじめ、徐々に増量しながら経過を観察するという方法が望ましいとされています。

 

なお、抗精神病薬は、一般には内服薬として処方されますが、医療機関によっては注射剤(デポ剤)を用いることもあります。

 

 

 

持効性抗精神病薬(デポ剤)

患者さんが服薬を拒否したり、規則的に飲むことが困難な場合には、筋肉注射の一種である「デポ剤」を注射する場合があります。デポ剤は、薬の成分がゆっくり時間をかけて体内に取り込まれるので、1回の注射で2〜4週間程度効果が持続します。

 

薬としては、ハロペリドール(商品名:ネオペリドール、ハロマンス)、フルフェナジン(商品名:フルデカシン)、リスペリドン(商品名:リスパダールコンスタ)などがあります。

 

ただし、デポ剤を一度注射すると、体の中に薬が長くとどまるので、副作用が出現した場合には、薬が体からなくなるまで待たなければならないという問題があり、使用にあたっては、患者さん(家族)は、そのメリットーデメリットについて主治医とよく話し合うことが必要です。


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