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統合失調症では抗精神病薬は効果が出るまであきらめずに服用することが大切です

統合失調症の抗精神病薬の副作用に苦しむ女性

 

抗精神病薬は効果より副作用が早くあらわれます

抗精神病薬には強い効果があるため、それだけにさまざまな副作用が出てくる可能性があります。薬そのものの副作用以外に、ほかの薬との飲み合わせで副作用が出ることもあります。

 

また、多剤併用などで薬の量が多くなったり、長く飲みつづけているような場合も、副作用が出やすくなります。

 

しかし、副作用の多くは、飲みはじめのころがいちばん強く、時間がたつにつれて徐々に弱まっていきます。逆に、薬の効果があらわれるまでには少し時間がかかるのがふつうです。副作用がつらいからと薬を飲むのをやめてしまっては、元も子もありません。

 

効果があらわれるまで飲みつづける必要がありますが、もし、どうしても副作用がつらくてがまんできない場合は、勝手に飲むのをやめないで、必ず主治医に相談しましょう。薬の種類や量をかえるなど、適切に対処してくれるはずです。

 

 

代表的な副作用は「錐体外路症状」です

抗精神病薬には、神経伝達物質であるドーパミンの働きを抑える作用がありますが、抑えすぎると「錐体外路症状」のような運動機能にかかわる副作用があらわれることがあります。

 

体や内臓の筋肉に、動きを指令するために信号を伝える運動神経は、脳から筋肉へ直接指令を伝える経路(脳の延髄の錐体と呼ばれる部分を通るので錐体路という)のほかに、運動が円滑に行えるように無意識のうちに筋肉の緊張を調節する経路があります。これを、錐体路以外の経路という意味で「錐体外路」といいます。

 

 

錐体外路が障害されると、運動が円滑に行えなくなるため、次のような症状があらわれます。

 

  • パーキンソン症状(パーキンソニズム) … 手足のふるえ、筋肉のこわばり、緩慢な動作(無動・寡動)、歩行障害などがあらわれます。
  • 瑤急性ジストニア … 自分の意思に反して、筋肉が緊張したり硬直してしまう症状です。舌が出たままになるろれつかまわらない、首や体が傾く眼球が上を向く(白目になる)、手足が突っぱったりねじれる、といった症状が見られます。急性ジストニアは若年者に多く、治療開始後数日で発症することが多い副作用です。
  • アカシジア(静座不能症) … 手足にむずむずするような異常知覚を感じて、そわそわしてじっとしていられない状態になります。焦燥感が出てくることもあります。具体的には、たえず歩きまわる、足を落ち着きなく揺らす、立っているときに足踏みをする、じっと立ったり座っていることができない、などです。アカシジアは、患者さんのもともとの不安やあせりの気持ちと区別することが困難な場合がありますので、注意が必要です。
  • 遅発性ジスキネジア … ジスキネジアとは「不随意運動」のことで、抗精神病薬を長い間飲んでいると、手足や首や胴体などが、勝手にくねくねとよじれるように動いたり、舌を左右に動かしたり、囗をもぐもぐさせたり、顔をしかめたりといった症状があらわれることがあります。

 

こうした錐体外路症状に対しては、一般に抗パーキンソン病薬を併用することで症状の改善をはかることができます。

 

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便秘や立ちくらみなどの「自律神経症状」

また、抗精神病薬は、体中の内臓の働きを調整する自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスにも影響をあたえ、さまざまな症状を引き起こします。

 

具体的には、便秘や口の渇き、よだれ、立ちくらみ(起立性低血圧)、動悸、頻脈(脈が速くなる)、排尿障害(尿が出にくくなる)、発汗過多、性機能障害といった症状があらわれます。

 

口が渇くと、どうしても水分を多くとりがちですが、過剰な水分摂取は、けいれんや意識障害などの重篤な障害を引き起こす危険があり(水中毒)、注意が必要です。対策としては、ガムをかんだりして、唾液が出やすいようにします。

 

こうした自律神経症状の多くは、時間がたつにつれて改善されるのがふっうですが、つらい場合は治療薬を使ったり、生活習慣を工夫することで対処します。

 

 

眠気やだるさなど過剰な鎮静作用

幻覚や妄想をやわらげる抗精神病薬には強い鎮静作用があります。そのため、眠気、だるさ(倦怠感)、頭がボーツとする、集中力が低下する、といった症状があらわれやすくなります。鎮静作用が強すぎると(過鎮静)、日中も寝てばかりいて、食事や排泄もままならないといった状態になる場合もあります。

 

陽性症状が活発な急性期には、多少の眠気やだるさが出ることはやむをえないことですが、症状がある程度まで回復し、こうした症状が生活のさまたげになるようであれば、薬をかえたり、眠気の強い薬は就寝前に飲むなどの工夫をします。

 

 

月経異常や体重増加など「内分泌・代謝」系副作用

抗精神病薬のドーパミン遮断作用によって、プロラクチンというホルモンが増加し、女性の場合、月経が不規則になったり(一時的に止まることもある)、乳房が張ったり、乳汁が出る(乳汁分泌)などの副作用が出ることがあります。生理が止まったり、乳汁が出たりすると、妊娠とまちがいやすいので、妊娠の可能性があるときは産婦人科を受診しましょう。

 

男性の場合は、女性化乳房、性欲減退、性機能障害(勃起不全など)が見られることがあります。

 

また、糖代謝や脂質代謝などの代謝がうまく行われなくなることにより、糖尿病や脂質異常症、体重増加などをまねくことがあります。

 

 

そのほかの副作用

そのほか、抗精神病薬には次のような副作用が出ることがあります。

 

  • 循環器系の副作用 … 抗精神病薬にはノルアドレナリンの働きを抑える作用があるため、動悸や不整脈、または血圧の低下が起こることがあります。
  • アレルギー症状 … 患者さんによっては、薬が体質的に合わずに、発疹やかゆみなどのアレルギー症状が出る場合があります。アレルギーには、服用後すぐにあらわれるものと、2週間〜1カ月ぐらいたってからあらわれるものがあります。服用後に発疹などが出た場合には、薬との関係を疑ってみる必要がありますので、早めに医師に報告してください。
  • 肝機能障害 … いままで飲んだことのない薬を服用した場合に、肝機能が障害されることがあります。自覚症状のあまりない軽度のものがほとんどですが、ときに黄疸が出ることがあります。

 

 

 

危険な副作用「悪性症候群」

悪性症候群は、抗精神病薬の治療中に、突然の高熱(ときに40度以上)錐体外路症状、自律神経症状、意識障害などが起こる副作用です。発生頻度は低いものの、非常に危険な副作用ですので、早期発見が重要です。

 

原因としては、強い抗精神病薬の投与開始時や、薬剤の増量時、抗パーキンソン病薬や抗不安薬の中止・減量時に、身体的疲労や脱水、精神症状の増悪などが重なった場合に発症することがあります。

 

抗精神病薬を飲んでいるときに、急な発熱など疑わしい症状があらわれた場合には、一刻も早く主治医に連絡して、できるだけ早く適切な処置を受けることが大切です。

 

治療は、入院して点滴を行い、必要な場合には筋弛緩薬のダントロレン(商品名:ダントリウム)という薬を投与します。

 

 

副作用について過度の心配をしない

以上に述べた副作用は、すべての患者さんにあらわれるわけではありません。また、一人の人にすべての副作用が出るわけでもありません。さらに、副作用のあらわれ方は、人によってさまざまで、薬の種類によっても異なります

 

前述したように、副作用の多くは、飲みはじめのころがいちばん強く、時間がたつにつれて徐々に弱まっていくのがふつうです。ですから、副作用について過度の心配をしないことが大切です。

 

薬は、必要なときはしっかり必要な量を飲み、症状が安定してきたら、少量をコツコツと気長に飲みつづける、それが副作用の予防にもつながります。

 

また、くれぐれも、処方された薬を自分で勝手にやめたり、量をかえたりすることはやめましょう。

 

ただし、何か心配な症状が出た場合には、「強い薬を飲んでいるのだから仕方がない」などと思わずに、どんなこまかなことでもきちんと主治医いに報告することが、再発を防ぐポイントです。

 

 

患者さんの薬に対する理解も必要です

これらの副作用の中には、薬を整理して量や種類を減らしたり、変更したりすることで防げるものも少なくありません。副作用で苦しむことを避けるためにも、患者さん自身が薬の知識をある程度持っていることが必要です。

 

最低限、いま自分が飲んでいる薬の種類は何か、量はどのくらいか、薬の一つ一つがどんな症状に対して処方されているのかについては知っておいたほうがよいでしょう。

 

もし、何か疑問があれば、納得がいくまで主治医に質問することが大切です。

 

 

薬を飲みつづけるための工夫

うつかりして飲むのを忘れた場合

統合失調症の薬の多くは、効いてくるまでにある程度時間がかかります。反面、副作用は早くあらわれるというやっかいな問題があります。そのため「薬を飲んでも全然効いてこない」「副作用がひどいから」と、勝手に飲むのをやめてしまったり、飲む回数を減らしてしまう人がいますが、これでは効くものも効かなくなりますので、絶対にやめましよう。

 

 

そうはいっても、薬をきちんと処方通りに飲みつづけることは、患者さんにとっては大仕事です。うっかりして飲み忘れることもあります。そのときは、気づいた時点で飲んでさしつかえありません。

 

ただし、その場合は、その後の薬を少し時間をあけて飲むようにします。もし、次に飲む時間が近づいていたら1回飲むのを飛ばしてもかまいません。1回薬を飲み忘れたからといって、すぐに再発が引き起こされるわけではありません。

 

飲み忘れを防ぐためには、
「家族の前で飲む」
「飲む時間をカレンダーに書いておき、飲んだらチェックする」
「1週間分の薬を朝昼夜・寝る前などと区分けして整理できるピルケースを利用する」
などの工夫をするとよいでしょう。

 

 

副作用がつらいときは主治医に相談を

副作用ががまんできないときは、遠慮せずに主治医に相談して、薬の量を減らすか、薬の種類をかえる、あるいは副作用をやわらげる薬を加えるなどの対策を考えてもらいましよう。

 

 

患者さんに薬を飲む意思がない場合

患者さんが「もう治った」と思い込んでいたり、妄想や幻覚のために薬を飲むのを拒否しているような場合は、改めて主治医から説明してもらって、薬の必要性を理解してもらいましよう。もしどうしても服薬をいやがる場合には、持効性抗精神病薬(「統合失調症の薬物治療に使う抗精神病薬は副作用の少ない非定型抗精神病薬が主流です」参照)の注射を検討することがあります。

 

患者さんが通院も拒否しているような場合には、家族が本人の気持ちを聞きながら、服薬をつづけなければ再発し、入院を余儀なくされることをじっくりと説明することが必要です。


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